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2021.07.14

RSウイルスの大流行?去年の400倍超

参照記事:産経新聞「RSウイルス感染急増 昨年の400倍超」

気になるニュースを見かけました。
小児外来でも今年は去年と比べるとはるかにRSウイルス感染症が増えています。

RSウイルスの大流行?去年の400倍超

<参照元>感染症・予防接種ナビ
【RSウイルス感染症】調査開始以来最多の患者報告数 患者数増の三重県の病院では約20人を継続して受け入れ

この図から2017~2019年は主に38週(9月14−20日)がピーク。それ以前は秋後半から冬にかけてのピークです。
2020年は幾度の緊急事態宣言・自粛幼稚園学校停止のため流行はほぼ見られませんでした。

実際には手指消毒や手洗いなどの一般的な対策で感染予防になるのですが、大都市圏での人出の増加に伴い第24−25週(6月14−27日)にかけて急激に増加しています。

また、今年はほぼ通常通りに幼稚園学校が始まったことで子供に多い感染症は去年より全般的に増加傾向ですが、RSVの感染拡大が急速に進んでいます。
また、大人はRSVに感染しても、鼻水程度の症状です。親から子に感染させることもあります。
これまで以上に手指消毒を心がけるようにお願いします。

RSV(Respiratory syncytial virus)について

世界中に存在しています。
乳幼児で重症化しやすいのと毎年特に都市部では大流行します。
一般的に温帯地域では冬・熱帯地域では雨季に流行しやすいです。
日本では大体秋から冬にかけての流行が多いですが、近年は初夏頃から流行し始めています。

症状

基本的には鼻汁・発熱です。
重症化すると鼻汁・痰がひどくなり気道が狭くなることでヒューヒュー・ゼーゼーといった呼吸困難をきたします。
また、気管支炎・肺炎などの下気道感染を起こします。

梅雨や台風の時期に多い子どもさんの咳症状についての動画

RSVは乳幼児の肺炎の原因の50% 気管支炎の50~90%と報告されています。
1歳になるまでの69%が罹患すると言われています。そのうちの1/3が肺炎・気管支炎を起こし重症化するリスクが高いです。年齢を重ねるにつれ症状は軽くなります。もちろん大人にも感染しますが、熱が出ることはごく稀で軽度の鼻風邪症状のみです。だから気が付かない間に親から我が子に感染していたなんてことはよくあります。
因みに乳幼児では毎年6~83%が再感染を起こします。
高齢者でも重症化することがあり、高齢者施設や重症心身障害児者施設などで集団感染することがあります。

治療

基本は鼻吸いと、気管支炎症状を抑えるための対症療法がメインとなります。
呼吸があまりにもしんどい場合、入院で酸素投与などの呼吸器管理が必要になります。基本的にRSVを倒す抗RSV薬などは存在しません。

予防は?

RSV はエンベロープで覆われているウイルスです。
ウイルスの表面が脂質のエンベロープで覆われている場合はアルコール消毒でウイルスが失活(死ぬ)します。つまりアルコール消毒の効果があります。
エンベロープのないウイルスにはアルコールの効果は弱いです。

RSウイルスの大流行?去年の400倍超

エンベロープウイルス(消毒効果あり)
  • RSウイルス
  • コロナウイルス(新型コロナ含む)
  • インフルエンザウイルス
  • ヘルペスウイルス
  • 風疹ウイルス
  • B型C型肝炎ウイルス
エンベロープのないウイルス(消毒効果弱い)
  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • アデノウイルス
  • ポリオウイルス
  • エンテロウイルス(コクサッキーウイルスなど)

文献:国立感染症研究所状況