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2025.12.02

今年のインフルエンザは“ちょっと違う”?

新しいウイルス「サブグレードK」と、ワクチン・治療について

今年はインフルエンザの流行がとても早く、そして強くなっています。
10月の時点ですでに全国的に感染が広がり、11月には警報レベルに達する地域も出てきました。

外来でも患者さんやご家族から、こんな声をよく耳にします。

「今年のインフル、なんだか流行早くない?」
「新しい型って聞いたけど、重症化するの?」
「ワクチンって効くの?もう熱が出て2日たったけど薬は間に合うの?」

今日はそんな疑問に、お答えします

「サブグレードK」ってなに? 今年の主流ウイルス

今シーズンのインフルエンザは、A型H3N2(いわゆる「香港型」)の「サブグレードK」という新しいタイプが中心となって流行しています。

この「サブグレードK」は、過去に何度も流行してきたH3N2が、少しずつ変化(=抗原変異)を重ねた“子孫”のような株です。
特に、ウイルスの“顔”とも言える「表面の抗原(HA)」の形が変わったため、過去の感染やワクチンで得た免疫が効きにくいのが特徴です。

つまり、

• 体がウイルスに気づきにくくなる → 感染しやすくなる
• 感染者が増える → 流行が早く・大きく広がる

ということになります。

ただし、今のところ重症化しやすいウイルスではないとされています。
毒性が特別強いわけではなく、「うつりやすく」「見逃されやすい」ことが特徴です。

ワクチンは効かないの? → いいえ、効きます!

今年のインフルエンザワクチンは、A/Thailand/8/2022(H3N2)という株をもとに作られています。
サブグレードKとは少しズレがありますが、それでもワクチンを接種する意味は十分にあります。

ワクチンには「重症化を防ぐ力」があります!

• 感染を完全に防ぐのは難しくても
• かかっても症状が軽く済む可能性が高くなる
• 高齢者や子ども、妊婦さん、持病のある方の命を守る“盾”になる

だからこそ、「どうせ効かないし…」とあきらめずに、できるだけ早めの接種をおすすめします。

治療薬(タミフルなど)は48時間以内が理想。でも…

「熱が出て2日経っちゃったから、薬はもう無理ですよね…?」

そんなご相談をよくいただきますが――

→ そんなことはありません

たしかに、抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザなど)は、発症後48時間以内の使用が最も効果的です。
しかし、時間だけで判断せず、「その人の状態とリスク」が重要なのです。

なぜ『ワクチンと流行株』がズレた?

インフルエンザワクチンは、半年も前からその年に流行しそうな株を予測して製造されています。
そのため、今回のように「予想外の新型(サブグレードK)」が登場すると、ワクチンとのズレが起きてしまうのです。

しかし、これは「外れた=意味がない」というわけではありません。

• 予測を超える変異だっただけで、ワクチンの機能は健在
• 重症化や入院のリスクを減らす効果はしっかりとあります

油断できない理由

サブグレードKは毒性が強いわけではありませんが、感染力が高く、流行が急拡大しやすいことが特徴です。

• 高齢者、乳幼児、基礎疾患のある方は、例年通り重症化リスクが高い
• 一見軽い症状でも、急に悪化するケースもあります

だからこそ、早めの予防と対応がとても大切です。

インフルエンザによる死亡者数は、実は多い

日本では毎年、インフルエンザが直接・間接的に関係する死亡が報告されています。

タミフル登場前(1990〜2000年頃)

 年間 約1万人 の関連死

ここ5年間(2020〜2024年)

 年間 約3,500人前後

ワクチンや治療薬がある今でも、油断すれば命に関わる病気であることに変わりはありません。

なぜワクチンを打つのか?

自分を守る

• 発症を防ぐ、または軽症で済ませる
• 重症化、入院、肺炎、合併症のリスクを減らす

社会・家族を守る

• 家庭・職場・保育園・学校などで感染を広げにくくする
• 赤ちゃんや高齢者など、ワクチンが打てない人を守る(集団免疫)

ワクチンは、「自分のため」だけでなく「大切な人のため」に打つものでもあるのです。

最後に

今年のインフルエンザは、
「ちょっとしたズレ」や「ちょっとした油断」で、思わぬ広がりを見せています。

でも、私たちができることはたくさんあります。

• ワクチンで重症化を防ぐ
• 手洗い・マスク・換気など、基本の感染対策をコツコツと
• 熱が出たら、自己判断せずに早めの受診を

そして何より、

お子さんの「いつもと違う様子」には、迷わず気づいてあげてください。