サル痘

2022.07.29

サル痘について

1970年にすでに発見されているウイルスです。
コンゴ民主共和国で初めてヒトの感染が確認されました。
1958年にワクチン製造用のサルのコロニーで痘そうの症状を示す疾患が発生したためにサルという名前がつきましたが、現在は宿主はサルではないことがわかっています。
国内では感染症法上の4類感染症に指定されています。
これまでアフリカ(中央〜西アフリカ)にかけて流行してましたが、
2022年5月以降、渡航歴のないサル痘患者が欧州・米国等といった世界各地で増えています。
1万6千人以上の感染例が報告されており、アフリカ大陸から5例の死亡例が報告されています。(7月22日時点)
WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、女性の感染も報告されています。
感染が急拡大した欧米の患者はほとんどが男性で、男性間で性的な接触があったケースが多いとされています。ただ、濃厚接触をすれば性別や年齢を問わず感染します。

  1. 病原体
    サル痘ウイルス(ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属)
    コンゴ盆地型(クレード1)と西アフリカ型(クレード2及び3)の2系統。
    コンゴ盆地型(クレード1)の方が西アフリカ型(クレード2及び3)よりも重症化しやすい。
  2. 感染経路
    アフリカに生息するリスなどの齧歯類、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。
    また、感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触、患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具等との接触等により感染すると考えられます。
    空気感染は2022年7月28日現在は確認されていません。

  3. 世界での発生状況
    サル痘について
    日本での初確認が2022年の7月25日で、2022年7月28日現在国内で2例が確認されています。
    いずれも男性で重症化はありません。
    Geographic distribution of confirmed cases of monkeypox reported to or identified by WHO from official public sources from 1 January 2022 to 22 July 17:00 CEST

  4. 潜伏期
    潜伏期間は5〜21日と言われています。

  5. 治療 診断

    臨床症状:

    インフルエンザ様症状が0~5日続き、発熱1~3日後に痘(水疱 水脹れ)が出現、発症から2~4週間で自然治癒します。
    臨床症状2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、以下のような、従来の報告とは異なる臨床徴候が指摘されています。

    • 発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合がある
    • 病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合がある
    • 異なる段階の皮疹が同時に見られる場合がある
    診断:

    PCR・蛍光抗体法など

    治療:

    天然痘はワクチン接種が積極的に行われた結果、1980年に地球上から根絶されました。日本国内で最後に接種が行われたのは1976年で、それ以降は接種を行なっていません。
    つまり現時点ではワクチンが存在しません。また治療法もなく2022年現在では対象療法のみになります。

そもそも天然痘との違いは?

天然痘:

ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属するDNA天然痘ウイルス

サル痘:

ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属するDNAサル痘ウイルス

天然痘は約3000年前から世界中で流行し、ヒトのみに感染する人類の歴史の中では切っても切れない関係にありました。天然痘ワクチンの誕生で、人類が唯一撲滅させることのできたウイルスと言われています。(1980年天然痘撲滅宣言)
しかしその他のポックスウイルスに関しての研究は進みませんでした。
症状は両者とも似ており発熱症状+痘(水疱 水脹れ)症状を起こします。
私自身は天然痘は経験したことがありません。
本来ウイルスには、生き残るために感染する動物が持っている防御機能にうち勝つ遺伝子があります。そのウイルスが特定の動物へ感染力を高めその動物のみに感染するように進化する場合があります。その代表例が天然痘ウイルスです。
サル痘ウイルスはまだまだ人への感染力は弱いですが、第二の天然痘になってしまう可能性はゼロではありません。

 

実は1970年以降、何度も世界で流行を認めていますが流行と言っても1年で世界で数十名の感染でした。
それが2022の5月18日で世界で数名の感染者が出たのを筆頭に、7月には世界で1万人もの感染爆発が起こりました。
さらに7月25日には日本でも初めての感染者が出たため、大騒ぎになっています。
現時点では感染力も弱く、重症化もごく稀なため冷静な対応が求められます。